3ヶ月に及ぶロックダウンで、何とか新規患者数・死亡者数が減少に転じたため、イギリス政府は7月4日付けでロックダウンの一部を解除しました。飲食店やショッピングモールが徐々にオープンして街が活気を取り戻していく様子を見ながら「ああ、やっと終わった。」とほっとしたのを覚えています。
このように、イギリスはあらゆる犠牲を出しながらも何とかCOVID-19の抑え込みに成功した様に見えましたが、ご存じのように残念ながらその状態は長くは続きませんでした。
「Part 1」に引き続きこの「Part 2」では、一度は持ち直したかのように見えたこの国が、再びコロナの波に飲み込まれていくときに一体何が起こっていたのか、ロンドンに住む外国人としてその中で筆者が目撃してきたものを記録しています。
なお、死亡者数等のデータはUK-GOV(英国政府のHP)から取得しています。
2020.8.3 「イートアウト・トゥ・ヘルプアウト・キャンペーン」始まる
‘Eat Out to Help Out’ scheme offers 50% off meals out in August
Total deaths: 41,306 / Daily deaths: 15 / Daily cases: 554
ロックダウン中にすっかり落ち込んだ外食産業を回復させるために、政府は8月中「Eat Out to Help Out キャンペーン」を打ち出しました。日本の「Go To キャンペーン」と似たようなものです。
- 登録された飲食店での飲食費の50%を政府が補助
- 上限は一人10ポンド(約1,400円)
- アルコールは除く
- 適用されるのは月・火・水
- 期間は8月中
- お客は割引後の食事代を払い、店はその分を後から政府に請求する
これは効果てきめんで、英国歳入関税庁によれば、全国49,000の対象になったレストラン・パブ・カフェが1ヶ月間に政府から支給を受けた金額の合計は8億4,900万ポンド(約1,200億円)。もともとの予算を3分の2以上上回る大盛況ぶりでした。

この期間に、多くの人がこのチャンスを逃すまいと家族や友達と普段以上に外食したわけですが、後に続く第2波の引き金となったクラスターの内8~17%がこのキャンペーンに由来しているとも言われています。
キャンペーンとしては大成功でしたが、結果的に新規の感染者を増やし、感染の第2波を大幅に加速させたとして批判も多い政策でした。
2020.9.7 6月以降1日の患者数としては最多を記録
UK records highest daily total of coronavirus cases since early June
Total deaths: 41,624 / Daily deaths: 15 / Daily cases: 3,863
この日のイギリス国内での新規患者数は3,863人、これは6月以降では最も高い数字で、COVID-19の第2波が来ることを予想させる数字でした。
この後、保健相(日本の厚生労働省)のマット・ハンコックが第2波の懸念を公式に表明、さらに9月以降ルールに反する「集会」等に対しては罰則を厳しくしていくと発表しました。
2020.9.24 「NHS COVID-19追跡アプリ」が全国で起動、新たな規制導入
More than one million people download the government’s new contact-tracing app
New regulations come into force
Total deaths: 42,025 / Daily deaths: 35 / Daily cases: 7,611
イギリス政府がGoogleやAppleと協力して開発したCOVID-19の追跡アプリ「NHS COVID-19」がリリースされました。このアプリの機能はBluetoothを使用しており、個人情報を登録することで自分の住んでいる地域の感染状況を知ることができたり、過去に感染者との濃厚接触があった場合はアラート(警告)メッセージを送信してくれます。
また、レストランやパブに入るときにはこのアプリを使用して店のQRコードを読み込むことが義務付けられ、この店で同じ時間に飲食していたお客から感染者が出た場合、感染のリスクありという事を教えてくれるという仕組みです。



アプリをダウンロード以降何度かロンドン中心部に行ったのですが、帰ってくると結構な確率でこのようなアラートがきていました。「心配しなくていいよ」というメッセージも同時に確認できますが、かなりビックリします。
この日同時に、新たなCOVID-19関連の規制もスタート。レストラン・パブ・ナイトクラブの夜10時以降の営業が禁止されました。
2020.10.14 イングランドで3段階の警戒レベル(ティア)が導入される
Johnson unveils three-tier COVID-19 restrictions for England
Total deaths: 43,536 / Daily deaths: 115 / Daily cases: 19,701
COVID-19の感染状況は地域によって差があり、それぞれの警戒レベルをより明確にするために政府が導入したのが3段階のティア(Tier)システムです。
- Tier 1-中程度:他世帯の人と屋外・屋外いずれでも会うことができるが、最大6人まで
- Tier 2-高い:他世帯の人と屋外でのみ会うことができる、最大6人まで
- Tier 3-非常に高い:他世帯の人と公園や運動場でのみ会うことができる(庭はダメ)、最大6人まで

これは規制のごく一部ですが、内容がTierごとに細かく分かれていて非常に分かりづらかった為、国民の批判を浴びていました。ちなみにロンドンはこのとき「Tier 2」に分類されました。
2020.11.5 イングランドが2回目のナショナル・ロックダウンに突入
England goes into lockdown: part two
Total deaths: 49,235 / Daily deaths: 375 / Daily cases: 23,742
Tierシステムを導入したものの患者数と死亡者数は日々増え続け、ついにイングランドが2020年12月2日までの4週間という期間限定で、2回目のロックダウンに入ることになってしまいました。スコットランド・アイルランド・ウェールズはそれぞれのルールが適用されており、この時点でロックダウンされたのはイングランドのみです。
1回目のロックダウンと違っていたのが、「学校は継続される」という点です。飲食店がわずか数ヶ月で再度営業を停止になった一方で、大勢の子供達が通常通り学校で集団生活をしていました。
ちなみに、このときのロックダウンは12月2日で解除され、その後また「Tierシステム」に戻りました。
同時に英国政府は1回目のロックダウン時に導入されていた休業補償制度の延長を決定、休業を余儀なくされる企業に勤める労働者に、一人月額2,500ポンド(約32万円)を上限として賃金の8割を継続して保証すると発表しました。
