日本国内で最もメジャーな英語試験といえばTOEICと英検です。
就職や入試で英語力が重視されるようになってから、資格というわかりやすいもので自分の英語力を示すことで、ライバルに差をつけられる世の中になりました。
でも、TOEICと英検のどちらを選べばよいのでしょうか?
筆者は、40歳手前でTOEIC335点という絶望的な状態から英語学習を始め、根気よく学習を続けた結果、英検1級・TOEIC 970点・IELTS 7.0を保持するに至りました。
この記事では、その学習を通じて発見したTOEICと英検の違いと、実際に就職活動で両方を履歴書に書いてみた時の企業側の反応などを、分かりやすくお伝えします。
TOEICと英検の特徴
まずは2つの試験のざっくりとした違いです。
2021年現在コロナの影響で試験回数に関してはイレギュラーになっていますが、だいたいこんな感じです。
受験者傾向を見るとわかりますが、TOEICは就職活動やキャリアアップのために受験する社会人が中心で、英検は入試優遇や海外留学を目指す学生の数が多くなっています。
TOEICと英検の難易度を比較
性格の異なる試験なので比較するのが難しいのですが、TOEICのスコアを英検の級に換算すると大まかには以下のようになっています。参照にIELTSも入れてみました。
CEFRとはヨーロッパで使用されている言語の熟練度を表す数字です。
このような換算表はよく見かけますが、性格の異なる試験を無理矢理比較しているので、あくまで「参考程度」だと思ってください。なぜなら、TOEICはリスニングとリーディングだけですが、英検とIELTSにはプラスしてライティングとスピーキングがセットになっているからです。
TOEICと英検1級を実際に受けてみて
実際に両方受けてみた素直な感想です
英検1級に合格した人がそのままTOEICを受けたら950点取れるかもしれないけど、TOIECで950点とった人がそのまま英検1級を受けても受かる確率は低いと思います。
TOEICは低~中難易度の英文をいかに早く正確に処理できるかを測る試験で、知識よりも「処理能力」が求められます。対して英検1級は膨大な単語量と社会的な知識と、英作文や2分間スピーチのようなクリエイティブな能力も併せて求められる試験です。
当然、英検1級の方が長時間の学習期間を要する上、年3回しか受験機会がないのでプレッシャーもかかってきます。
従って、勝手に難易度をつけるとしたら…
TOEIC 900点 ★★★
英検1級 ★★★★★
というのが、実際に英検1級とTOEIC 970点をとってみての感想です。
TOEIC900点オーバーと英検1級の世間的な評価
社会的な知名度はTOEICの方が上です。
最近よく「錯覚資産」という言葉を耳にしますが、TOEICとはまさにこれです。受験者全員が同じ試験を受けるので、難易度を想像しやすく、他者との比較も容易です。
平均スコアは600点前後で、900点オーバーの受験者は全体の約3%しかいないので、「あのテストで900点以上取れるなんて、この人の英語力はすごい!」という印象を持たれやすいのです。
対して英検は、最上位の1級の受験者数はわずか2.6万人(現在受験数の内訳は非公開のため2010年時点のデータ)、つまり英検1級と聞いても殆どの人が「え?なにそれ?」となるわけです。
4技能をバランスよく伸ばす必要がある上、準1級と1級に限っては文章力や論理的思考も要求されますので、難易度ではTOEICを上回ります。しかし、残念ながら1級はもはや英語オタクの域と言っても過言ではなく、日常生活で「英検1級って難しいよね~」という会話ができるチャンスはまず無いでしょう。
【TOEIC900点】
社会的に知名度が高く、ハイスコアを取れば「英語ができる人」という評価を受ける
【英検1級】
英語学習者の間では憧れの的だが、難易度の割に社会的評価はイマイチ
TOEICと英検どちらがおすすめ?
費用対効果を考えれば断然TOEICです。
日本には「TOEIC神話」があり、仕事探しやキャリアアップのために求められるのはTOEICスコアです。就職活動でライバルに差をつけて有利に立ちたい方や昇進試験の受験資格を勝ち取りたいという方は、まずはTOEICで高いスコアを取ることを目指すべきでしょう。
学習法も至ってシンプルで、ひたすら過去問や問題集に取り組むトレーニング的なものになります。
一方、スピーキングやライティングといった「ツールとして使える英語」を学び、外国人とコミュニケーションがしたい方には英検がお勧めです。
4技能の修得が必要なため時間とエネルギーを要しますが、学習の過程でしっかりと基礎を身につけることができますので、合格した時には本当に自分の成長を感じることができます。英検の合格後にTOEICにチャレンジすると「あれ?なんだか簡単…。」と感じますよ、きっと。
履歴書にTOEICと英検を載せてみた結果
ちょうどTOEICで900点台を取った時と就職活動の時期が重なったので、転職サイトのWEB履歴書に記載することにしました。
TOEICはスコアを記入する専用欄があるのに対して、英検はその他の資格と併せて普通免許等と一緒に記入、ここでもTOEICがいかに企業に重要視されているかわかります。コーディネーターの方には「何か英語を使ってできる仕事があれば紹介してください。」とお願いしておきました。
結果、メーカー、金融、法律系、ブランド物の販売、ホテル等の接客など、英語力を重視する数多くの企業を紹介してもらいました。特にその分野で経験が無くても、ただTOEICのスコアを公開するだけでこんなにもチャンスが広がるのかと驚きました。
最終的には過去に勤めていた勤務先に戻ることになったので、どの会社ともお話する機会はありませんでしたが、TOEICスコアが就職活動の助けになることは事実です。
印象だと、730点以上から「英語力」としてアピールができて、850点以上取れば「英語上級者」という扱いのようです。英検は「必須条件」としている企業がないので、単なる「プラスα」でしかありませんでした。
おわりに
TOEICと英検を実際に両方受けてみた者の目線から比較しましたが、いかがでしたでしょうか。
それぞれ良い点・悪い点があり受験する目的も違いますので、優劣をつけるのは適切ではありませんが、英語学習者にとっては「どっちが上なの?」と、ちょっと気になるところです。
この記事が、そんなあなたの好奇心を少しでも満たすことができれば幸いです。
努力が目に見える形で残るのは嬉しいものですが、どちらの資格を持っていても、結局は「その英語力を使って何ができるか」が大切です。
個人的には、TOEICも英検も努力する価値のある素晴らしい資格だと思いますので、ご自身の目標達成のため、加えて、英語力向上のために是非とも頑張ってください。
TOEICと英検それぞれの勉強法についての記事もありますので、興味がありましたらそちらもご参照ください。