ゴルフ発祥の地と言われているスコットランドには500を超えるゴルフコースがあります。
当地でゴルフは「誰でも楽しめる国民的スポーツ」として親しまれており、日本と比較すると非常にお手頃な料金でプレイすることができます。
しかし、そういったお手軽なゴルフコースとは一線を画す「超一流のゴルフコース」が存在します。それが全英オープン選手権も開催される「リンクス」です。
リンクスとは、人の手を加えない「あるがままの自然の状態」をあえて残している海岸沿いのゴルフコースのことで、深いバンカー、腰の高さまであるラフ、海岸地方の強風と気まぐれな天気が特徴です。
今回は、世界中のゴルファーがあこがれるスコットランドの超一流リンクスの数々を、詳しく紹介していきます。
St Andrews / Old Course(セント・アンドリュース / オールド・コース)
この石橋、ゴルフ好きの方であれば一度は見たことがあるのではないでしょうか。
ここは世界最古のゴルフコース、セント・アンドリュース・オールドコースまたの名を「ゴルフの聖地」と呼ばれています。
毎年開かれる全英オープンの5回に1回はここで開催されており、まさに「The home of golf」と呼ばれる所以です。
世界中のゴルファーの憧れの的だけあってラウンドするのはかなり難しく、確実にプレーしたければ数ヶ月~1年前から予約を入れる必要があります。予約以外にも前日にバロットという抽選に申し込むか(2人以上)、当日の夜明け前から並んで待つ、という手段はありますがいずれもプレーの確約はありません。
1stティーの対角線上から撮った写真ですが、お分かりいただけますでしょうか?写真中央よりやや左の白い建物の前あたりが、1番ホールのティーグラウンドです。
道路側から見物している観客を背にして最初のティーショットを打たなければいけないため、その緊張に打ち勝てるかどうかが最初の試練のようです。
コースは意外とフラットです(素人目線)。ですが、海から吹く強風と短時間で目まぐるしく変わる天候が、ここでのラウンドを難しいものにしています。
名物17番ホールにある有名なバンカー。1978年開催の全英オープンで、中島常幸選手がこのバンカーにつかまり、脱出に4打要したため日本人男子選手初のメジャー大会優勝のチャンスを逃したことから、中島選手の愛称をとって「トミーズ・バンカー」とも呼ばれています。
最後の18番ホールです。有名な石橋「スウィルカン・ブリッジ」を越え1番ホールのティーグラウンドの右側方向へ打つのですが、ここも道路沿いなので沢山の人に見られながら打つことになります。
ご覧の通り、コース内には道路も通っていて、観光客や犬の散歩をする人達が行き来していました。
「聖地」と呼ばれるからにはさぞかし敷居の高いゴルフコースだろうと思っていましたが、とてもオープンな雰囲気でした。
レストランとショップが入る美しいクラブハウスは、誰でも入れる気軽な雰囲気です。オールドコースを案内してくれるガイドツアー(要予約)もありますので、プレーしなくてもコースを見学することができます。
イギリスのクラブハウスの定番、ハンバーガーとフィッシュ&チップス。美味しくて、ボリュームたっぷりです。
オールド・コースでプレイするためのハンディキャップは36以下である必要があり、料金はハイシーズンで£200前後です。ほかにも6つコースがありますので、オールド・コース+1コースをセットで予約するのが一般的なようです。
Muirfield(ミュアフィールド)
16回も全英オープンが開催されてきた超名門コースがこの「ミュアフィールド」です。
過去にはジャック・ニクラウス、トム・ワトソン、アーニー・エルスといった、素人でも名前を知っているレジェンド達がこのコースで勝利を収めてきました。
セント・アンドリュースが一般の人々に開かれた「パブリック・コース」なのに対して、ここは『プライベート・コース』なのでビジターがラウンドできるのは火曜日と木曜日だけ。枠自体が少ないので、前もってホームページで空き状況を確認して数ヶ月~1年前から予約を入れます。
一見起伏が少ないように見えて実は傾斜だらけなのがリンクスの特徴で、少し狙いを外すとすぐにボールがバンカーに吸い込まれていきます。
ここのゴルフクラブは「世界最古のゴルフクラブ」と言われており、会員になるだけでも25人から推薦を受けなければいけません。
創立以来270年間ずっと女人禁制でしたが、それが理由で全英オープンの開催コースから外されたこともあり、2017年3月から女性会員も認められるようになりました。
現在は全英オープンのローテーションに復帰しています。
名物の17番ホールは506ヤード・パー5のロングコース。ティーからは全くグリーンが見えません。
夏季料金は1ラウンド£285と安くはありませんが、これだけの名門コースでプレーできることはめったにありませんので、それだけの価値はあると思います。
ちなみにハンディキャップは18以下である必要があります。現地で証明書の提出は求められませんでしたが、念のため持参したほうが良いかもしれません。
世界のトップ・ゴルフコースランキングでも必ず上位に入るミュアフィールド。「Top 100 Courses in the World for 2020-21」では12位にランキングしています。
2022年の全英女子オープンの開催予定コースでもありますので、皆さんもテレビでこのコースをご覧になるかと思います。
所在地 | Duncur Rd, Muirfield, Gullane, Gullane, East Lothian, Scotland EH31 2EG |
HP | http://www.muirfield.org.uk/ |
Carnoustie Golf Links / Championship course(カーヌスティー ・ゴルフ・リンクス / チャンピオンシップ・コース)
海沿いの絶景の中に建つのが、「カーヌスティー・ゴルフ・リンクス」のクラブハウスです。
1850年のオープン以降、7回全英オープンが開催されている名門コースで、2021年の全英女子オープンの開催地でもあります。
ご覧の通り、海沿いに設置されたコースは海からの強風をまともに受け、これぞ「リンクス」といった感じです。
全英オープンの開催コースの中では一番の難コースで、世界中のゴルフコースの中でも5本の指に入る難しさと言われています。
ここで開催された過去の全英優勝者の平均スコアが4日間で288(72×4)ストロークだそうで、この数字からもどれだけ難しいコースか分かります。
カーヌスティーが難しいと言われる理由の1つが、このコース各所に流れる「バリー・バーン」と呼ばれる小川です。
ドライバーでのティーショットが上手くいった!と思ったら飛びすぎて「バリー・バーン」に入ってしまうという残念な出来事もありました。
名物ホールは最終18番。このホールにまつわる有名なエピソードが「カーヌスティの悲劇」といって、2位に3打差をつけていた選手が18番ホールの小川に入れてしまった結果トリプルボギーを叩き、プレーオフで敗れてしまったそうです。
上の写真は18番ホール、グリーン手前のフェアウェーから。
左奥の白い建物が「カーヌスティゴルフホテル&スパ」、右側の茶色い建物がクラブハウスです。
グリーンがホテルの目の前にあるのですが、実はその手前に「バリー・バーン」がある為気を付けなければいけません。
プレイ料金は繁忙期で1ラウンド£270(2021年料金)、予約から7日以降はキャンセルによるリファンドはありません。2人以上はオンラインで予約できますが、1人の場合は個別にメールか電話でのやりとりが必要な上、他のグループに入れてもらう形でのラウンドになります。
印象的だったのが、充実したショップと、とってもフレンドリーなゴルフ場スタッフの方々です。名門コースではありますが、ミュアフィールドよりはオープンな感じがします。
ちなみに宿泊は、意外な程リーズナブルな「カーヌスティゴルフホテル&スパ」がお勧めです。
Royal Dornoch / Championship Course(ロイヤル・ドーノック / チャンピオンシップ・コース)
筆者が最もご紹介したかったゴルフコースがここ。スコットランド北部最大の都市であるインバネスよりさらに北へ車で一時間、「北の至宝」と呼ばれる「ロイヤル・ドーノック」です。
世界中のプロゴルファー憧れのリンクスで、トム・ワトソンも「5大陸屈指のリンクス、最高に面白いコース」と絶賛したそうです。
今まで一度も全英オープンが開催されたことが無いのにも関わらず、「Top 100 Courses in the World for 2020-21」では、ミュアフィールドとカーヌスティを抜いて10位にランクインしています。
世界的な大会が開催されない理由としては、「交通の便が悪いから」や「観客席を設置するスペースがないから」と言われていますが、どれが本当かははっきりとしません。
コースは内陸の1~9番ホールを真っすぐ進んだところで折り返し、海沿いの10~18番ホールを帰ってくるという典型的なリンクスです。
ご覧のように、大自然の中にまるで「埋め込まれている」ようなコースではありますが、フェアウェイとグリーンは手入れが完ぺきに行き届いています。
ここでのラウンドを難しくしているのが、コースだけではなく「天候」です。スコットランド、特に海岸沿いは1日のうち天気が目まぐるしく変わることがあり、さっきまで晴れていたのに10分後には土砂降りといったことも日常茶飯事です。このコースに限りませんが、リンクスでのラウンドの際はしっかりと準備していくことをお勧めします。
右奥の建物がクラブハウスで、1階が受付兼ショップ、2階がレストランになっています。
クラブハウスで食べたタコライスが美味しかったです。
ハイシーズンの料金は1ラウンド当たり£195(2021年)、プレイする日より4週間前のキャンセルに関しては返金はありません。予約はオンライン、メールどちらでも可能です。
最もユニークで最も遠い、偉大なリンクス ロイヤル・ドーノック。「北の至宝」と呼ばれる理由が、実際に行ってみてはっきりと分かりました。
天候が荒れるとプレーできなくなることもあるそうですので、ここまで行くのは一種の賭けのようなところもありますが、間違いなく苦労してでも行く価値のあるゴルフ場です。
おわりに
スコットランドが誇る4つのリンクスをご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。
日本では数少ないリンクスですが、スコットランドを始め英国国内には数多くの素晴らしいリンクスが点在しています。いずれのコースも自然が溢れていて、人間の手を加えるのは最低限、自然との闘いもまたここでのゴルフの大切な要素の一つです。しかしその深い歴史と格式の高さとは裏腹に、リンクスは人々に対してオープンで、プレーしたい人を拒みません。
人気の高さ故の予約のしづらさはありますが、どんな一流コースでも全く構えることなく気軽にラウンドできてしまうのが、ここ英国でのゴルフの素晴らしさです。
日本又はロンドンからこれらのコースに行かれる場合は、エディンバラ空港でレンタカーを借りて回ると便利です。ハードではありますが、1週間で回れなくはありません。
ロンドン在住の方で車をお持ちであれば、2~3人で交代で運転して「観光しながらスコットランドへゴルフツアー」も面白いですね。